データを活用して、顧客・従業員満足が『利益』を生む経路を探索する

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2018年の年末、ひとつの広告が話題になりました。ラーメンチェーンの幸楽苑ホールディングスが新聞の全面広告で「2億円事件」というコピーの下、12月31日15時から1月1日いっぱいまで「全店」を休業させることをアナウンスしたものです。

 

背景には、その期間休業することで、売上を2億円失ってでも自社で働く人にお正月休みをとれるようにしたいという思いがあったとのことです。労働力不足が問題になっている日本では、これまで以上に働く人の気持ちも考慮しなければならないことを象徴するニュースだったのではないかと思います。

 

今回は、この売上と従業員満足度について考えたいと思います。

 

今回のタイトルにも使っている「顧客・従業員満足が『利益』を生む」は、「バリュー・プロフィット・チェーン―顧客・従業員満足を「利益」と連鎖させる」という書籍から拝借したものです。

この本では、なぜ、従業員を満足させることが顧客満足度、ひいては売上につながるかが論じられており、そのひとつとして従業員満足度に関わる要素と財務業績をデータ分析した結果、導かれた「マイスターモデル」というものが紹介されています。

 

図:マイスターモデル (引用元:https://sociotechnologix.wordpress.com/2014/11/11/)

* b  : 統計的に有意な説明変数の1単位の変化によってもたらされる被説明変数の変化量の値。* r: 統計的に有意な変数間のお互いの変動が説明できる割合の値

 

マイスターモデルのロジックを簡単に説明すると、財務業績は品質と顧客との関係によって左右されるとするもので、さらに以下のような結論づけもされています。

次の4つの従業員満足に関する質問項目(6ポイント尺度)への反応が4から5に高まることで、彼が研究した組織の財務業績は42%改善しただろう。

  1. わたしは、自分の仕事に非常に満足している。
  2. わたしは、仕事を通して達成感を得ている。
  3. わたしが与えられている仕事の大半は、それを繰り返すというよりも、挑戦的なものである。
  4. わたしは、キャリア開発の機会としてこの会社にかかわっている。

最近、日本でも注目されるようになったエンゲージメントの考え方も内包されており、アメリカのマーケティング会社のデータから構築されたモデルとはいえ、日本の多くの企業が従業員満足度向上による業績向上のインパクトを考えていくうえで参考になるのではないかと考えています。私見としては、このようなモデルを自社の状況にあわせて検討し、作り上げていくこと(できればループ図で)が人材育成、組織開発の担当者に求められるようになってくる(きている)と思っています。

一方で当モデルは、業績に少なくない影響を与えうるマーケティングの巧拙、チームメンバーの関係性、また、業績の良し悪しが従業員の満足度に与える影響といった要素を十分に加味していないことに違和感を覚える方もいるかと思います。そこで、別の視点として企業の業績がマーケティングを行う組織の能力次第であるというモデルが説明される「データ・ドリブン・マーケティング―最低限知っておくべき15の指標 –」の考え方を第2回で考察していきたいと思います。

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