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世代間の公正に対する想い

2024/10/29

世代間の公正に対する想い

  • # Racoosaの探究

2014年、ノルウェーのオスロで「フューチャーライブラリー(The Future Library)」というプロジェクトがスタートしました。発案者は現代アーティストのケイティ・パターソン。彼女は向こう100年、毎年著名な作家から寄贈される1作品を未公開のまま2114年まで保管するという試みを始めたのです。2114年、これらの作品はオスロ郊外に植えられた1000本の木から供給される紙で印刷される予定です。このプロジェクトは単なる文学保存の試みではなく、パターソンが「1世紀にわたる祈り」と呼ぶ未来へのメッセージです。

彼女のプロジェクトを初めて耳にしたとき、心が浄化されるような感覚、そして「何かしなければ」というちょっとした緊張感を覚える自分がいました。なぜこんなにも心を惹かれるのか? 心理学の視点でいうところのエリクソンが提唱した「世代性=人生の中盤で次世代に貢献しようとする心理的な動機」の発露かもしれません。しかし、それだけでは説明できない魅力がこのプロジェクトには秘められているように感じたのです。

ひとつには、環境・社会・経済の持続可能性という主語が曖昧になりがちな問題を、自分自身の未来の問題として捉えさせる力があることです。作家たちが100年先の世代に向けて文章を綴るという行為を想像すると、必然的に私たちの頭のなかにもその受け取り手である100年先の”読者”が意識にあがります。行動経済学では「人は、より具体的なものや自身との心理的距離が近いものに、より大きな価値を感じるため、遠い未来の抽象的な報酬にはあまり価値を感じにくい」と言われています。持続可能性の問題が難しさとして価値を感じにくいことがある一方で、フューチャーライブラリーは、遠い未来の抽象的な意義をぐっと身近にたぐりよせてくれるように思います。

もうひとつには、自然と人間の関係性として自然が「先」にあることの安心感も大きな要素としてあります。現代社会においては「本をつくりたい→木を切ろう」といったような人間の願望や欲望が先におかれる発想が支配的ですが、このプロジェクトでは「木を育てよう→本がつくれるね」と発想の起点を自然においている点も特徴的です。この発想で本をつくるプロセスに絶対的に求められるのは「育てること」と「待つこと」。短期思考、短絡思考に陥りがちな私たちに「育てる時間」や「待つ時間」の大切さをやさしく思い出させてくれる点、自然と人間の関係性の未来にも眼差しがそっと向いている点も好きなところです。

私たちの事業でも、未来の世代の人たちの顔、自然の姿を想像し、敬意を示しながら「育てる時間」や「待つ時間」を大切にして、未来と現在が共存し、次世代へのギフトとなるような取り組みを進めていきたいと考えています。

<参考>

・Katie Paterson | TEDWomen 2021 | The mind-bending art of deep time

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