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社会起業家は、仲間をどう集めるか?

2026/2/24

社会起業家は、仲間をどう集めるか?

  • # 初志を支える

  • # 組織化を支える

社会起業をされた方のコーチングをしていると、創業初期の仲間集めについて相談を受けることがあります。今回はそのテーマについてにお話しさせていただきます。

そもそも仲間を集めるのは、組織をつくり、起業家一人では成し遂げられないことを実現するためです。

その「実現したいこと」は、社会起業家が信じている理想の未来であったり、解決したい社会課題であったり、新規性のあるビジネスモデルや独創性に富んだサービスであったりと、さまざまな次元で語られます。

どの次元から語るにせよ、仲間集めを進めるうえで、実現したいこととあわせて、あらかじめ考えておいた方がよい問いがあります。


それは、

「私たちは、何のために存在するのか」

という問いです。


組織目的を明文化するということ

組織論の名著『すぐれた組織の意思決定』の著者である印南氏の言葉を借りると、企業の究極的な目的は、社会の中で存在すること(=付加価値提供+倫理充足)にあります。


特に社会性を志向する企業ほど、「私たちは、何のために存在するのか」という問いへの回答として、組織目的を明文化することが重要になります。なぜなら、組織目的には以下のような機能と利点があり、仲間を集める際の判断基準、また、ともに事業を進めていく際の不要なミスコミュニケーションの回避に役立つからです。

▼組織目的の機能

・構成員のコミットメントや貢献意欲を引き出す

・構成員の評価基準となる

・意思決定の方向を示し、あるいは制約を与える認知基準となる

・意思決定や行動を正当化する拠り所となる

・外部環境(いづれかの領域で利害が一致しないステークホルダー)の反対や抵抗を緩和し、支持や資源獲得を助ける


▼組織目的の明文化の利点

・コンフリクトの所在を明確にできる:明文化されていないと、そもそも「何を組織目的でやってきたのか」自体がコンフリクトの争点になり、そこからの明文化が政治化しやすい

・コスト削減的:問題が起きるたびにゼロから議論し直すコストを抑えられる

・人材養成に役立つ

・外部の利害関係者からの資源獲得や同盟形成がしやすくなる


組織目的は「あなたらしさ」と結びつけて語る

組織目的は、パーパス(Purpose)、ミッション(Mission)、経営理念として明文化されることが多いですが、明文化していくなかでひとつの課題に直面します。
それは、表現が抽象的になりすぎることです。

たとえば、パーパスの表現の抽象度が高すぎると

- 持続可能な未来を創造する

- 地域社会とともに成長する企業であり続ける

- イノベーションによって世界を再構築する

といった文言になります。

これらは立派な言葉です。けれど、この言葉を掲げる企業に対して「ぜひここで働きたい」とどれほど感じるでしょうか。

組織目的はある程度抽象的になるのは避けられません。だからこそ、それを語るときには、あなたらしい、あなた自身の経験や身体感覚と結びついた物語が必要になります。

大きな社会テーマからではなく、なぜそれに取り組むと決めたのかという私的な原体験や、そこに至るまでの長い物語。

起業家である「わたし」の話を聞いていたはずなのに、
聞き手がいつの間にか「わたしたち」の話として受け取り、当事者として語りたくなったとき、仲間に変わっていきます。


周囲からみた「あなたらしさ」

ここで、ひとつ表現について気をつけたいことがあります。

掲げる組織目的が、周囲から見て「あなたらしい」と感じられる姿ではなく、あなたの憧れや周囲から見られたい姿になってしまう懸念です。

ブランドマネジメントの領域で、ブランド・アーキタイプという考え方があります。企業にも人格があると捉え、その人格を適切に体現できている企業ほど、顧客からの信頼を得やすいとされます。そして、創業期の企業人格は、創業者の人格と強く結びつくとされます。

文末に、参考として12のブランドアーキタイプを掲載しました。
周囲から見たとき、あなたらしい姿はどのタイプに近いでしょうか。
その視点も、企業目的を明文化して表現する際のヒントになるはずです。


価値をともに構想し、拡張する

最後にもうひとつ。

創業初期に誰かを誘うとき、とくに誠実で責任感の強い人ほど、

「この人に、私は何を提供できるだろう」

と考えてしまうことがあります。

・ 十分な報酬を払えるだろうか
・ キャリアとして意味のある経験を提供できるだろうか
・ 無理のない働き方を約束できるだろうか

そんなふうに、“差し出せるもの”を探し始める。

もちろん待遇や条件は大切です。
けれど創業初期において中心に置くべき問いは、そこではありません。

本質的な問いは、
どうすれば、この人と一緒に、まだ存在しない価値を生み出せるかです。

・ どんな顧客に、どんな新しい選択肢を届けられるだろうか
・ どんなプロダクトやサービスを社会に提示できるだろうか
・ どんなチームをつくり、どんな最高の組織になっていけるだろうか

仲間は「働いてくれる人」ではなく、

価値をともに構想し、拡張していく人です。

まず一緒に価値を大きくすることを考え、
その成果をどう分かち合うかを後から設計する。

この順番が逆になり、
「何を与えられるか」という交換発想が前面に出すぎると、
関係性は長期的な共創ではなく、短期的な条件ベースの関係に傾きやすくなります。

社会起業の仲間集めは、
条件の提示ではなく、未来の共有から始まるのだと思います。


結びに

仲間探しは、外に向かう行為のようでいて、
実は自分自身を深く見つめる時間でもあります。

どんな未来を、本当に望んでいるのか。
その未来を、誰とならつくりたいのか。

急がなくていい。
あなたがあなたらしく語れる目的が整ったとき、
その言葉に静かに頷く人が、きっと現れます。

社会起業の始まりは、そんな出会いから動き出すのだと思います。


参考:12のブランド・アーキタイプ

ブランド・アーキタイプ

組織目的の方向性
例.1

組織目的の方向性
例.2

組織目的の方向性
例.3

01. Innocent

* 私たちは、人々が日々直面する課題に、シンプルな解決策を示す存在である。

* 私たちは、善良さと純粋さを大切にし、健やかさと安心感を象徴するブランドである。

* 私たちは、本質を大切にすることで信頼され、繰り返し選ばれる存在である。

02. Explorer

* 私たちは、人々を既存の枠から解き放ち、新しい地平へと導く存在である。

* 私たちは、自由と個性を尊び、常識に縛られない選択肢を提示する。

* 私たちは、未知の世界へ踏み出す勇気を体現するブランドである。

03. Sage

* 私たちは、深い洞察と確かな根拠に基づいて真実を明らかにする存在である。

* 私たちは、考える力を育み、理解を深めるための知識を提供する。

* 私たちは、不確かな情報があふれる世界において信頼の基準となる。

04. Hero

* 私たちは、大きな課題に正面から挑み、行動によって世界を前進させる存在である。

* 私たちは、困難を打ち破り、成果によって変化を証明する。

* 私たちは、最後までやり遂げる強さを誇りとする。

05. Outlaw

* 私たちは、既存の常識を疑い、新しい価値観を提示する存在である。

* 私たちは、「それはおかしい」と声を上げ、ルールを塗り替える。

* 私たちは、主流に迎合せず、革命的な変化を起こす。

06. Magician

* 私たちは、人の可能性を現実の変化へと変える存在である。

* 私たちは、革新的な技術や発想によって、これまでにない体験を実現する。

* 私たちは、今ある世界の見え方を一変させる。

07. EveryPerson

* 私たちは、特別であることよりも“ふつう”であることに価値を置く。

* 私たちは、人々の暮らしに自然になじみ、身近な存在であり続ける。

* 私たちは、誰もが無理なく選べるブランドである。

08. Lover

* 私たちは、人と人との親密さや愛情を育む存在である。

* 私たちは、美しさや感性を通じて心を満たす体験を提供する。

* 私たちは、関係性をより豊かにするために存在する。

09. Jester

* 私たちは、人生をもっと軽やかに、楽しくする存在である。

* 私たちは、遊び心とユーモアで人々をつなぐ。

* 私たちは、「今この瞬間」を思いきり楽しむことを肯定する。

10. Caretaker

* 私たちは、人を守り、支え、安心を提供する存在である。

* 私たちは、思いやりと責任感をもって寄り添う。

* 私たちは、人と人とをつなぎ、互いを大切にする文化を育む。

11. Creator

* 私たちは、まだ存在しないものを形にする存在である。

* 私たちは、新しい価値を生み出し続ける。

* 私たちは、創造そのものをアイデンティティとする。

12. Ruler

* 私たちは、秩序と安定をもたらす存在である。

* 私たちは、力を持つ人々がその力を正しく発揮できる環境を整える。

* 私たちは、混沌の中に構造と長期的な安心を築く。



参考文献)

・印南 一路 著, 「すぐれた組織の意思決定: 判断と選択の心理学」
・マーガレット・マーク 他 著,「ブランド・アーキタイプ戦略 THE HERO AND THE OUTLAW 驚異的価値を生み出す心理学的アプローチ」  

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